全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫が本来の働きを誤り、自分の体を攻撃してしまう病気です。全身のさまざまな臓器に影響を及ぼすことがあり、関節や皮膚、腎臓、心臓、脳などに影響を与える場合もあります。

SLEの症状は人によって異なり、軽い方もいれば、慎重な治療管理が必要となる方もいらっしゃいます。しかし、現在の治療は進歩しており、病状をうまくコントロールしながら日常生活を送ることが可能です


SLEの主な症状

SLEは、初期の段階では「なんとなく体調がすぐれない」と感じることも多く、気づかれにくいことがあります。次のような症状が続く場合は、医療機関への受診をお勧めいたします。

  • 関節の痛みや腫れ(リウマチと似た症状がみられることもあります)
  • 原因不明の発熱(微熱が続くことがあります)
  • 強い倦怠感や疲れやすさ
  • 皮膚の発疹(頬に蝶形紅斑と呼ばれる、蝶のような形の赤みが出ることがあります。全身の発疹の原因ともなります)
  • 日光に当たると体調が悪くなる(日光過敏)
  • 腎臓に障害が起こる場合もあります

これらの症状のいずれかが続く場合は、一度検査を受けることをお勧めします。


SLEの診断

SLEは血液検査を中心とした診察で診断されます。

  • 抗核抗体(ANA)検査:SLEの方の多くで陽性となります。
  • 抗DNA抗体・補体:病気の活動性をみる指標になります。
  • 炎症反応(CRP・ESR):炎症の程度を評価します。

また、関節や臓器の症状がある場合は、レントゲンやMRI、腎臓の検査などを行うこともあります。


SLEの治療

SLEは、現在の医学では完治させることは難しい病気ですが、適切な治療を行うことで、症状を抑え、日常生活を支障なく送ることが可能です

🔹 これまでの治療

かつてSLEの治療では、ステロイド(副腎皮質ホルモン、糖質コルチコイド)が中心でした。ステロイドは炎症を抑える効果が高い一方で、長期間の使用により骨粗しょう症や糖尿病、感染症リスクや動脈硬化リスクが高まることが問題視されています。ただしステロイドを急にやめることで再燃のリスクが上がることも知られており治療の選択肢が少ない時代は副作用に目をつぶってステロイドを使用していました。

🔹 最近の治療の進歩

しかし現在は、ステロイドに依存しすぎない治療が進められています。

  • 免疫抑制剤(アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミドなど):免疫の過剰な働きを抑えます。
  • 生物学的製剤(ベリムマブ・アニフロルマブなど):SLEの原因となる免疫の異常をピンポイントで抑える新しい治療法です。

これらの治療により、副作用を抑えながら病気をコントロールすることが可能になってきています

私はSLEの生物学的製剤の研究を順天堂大学で行っており、なるべくステロイドを減量した治療を目指して診療しております。


診断後の生活について

SLEと診断された後は、定期的な通院とお薬による治療が必要になります。以前は長期の入院によって生活スタイルや人生を大きく変えざるをえない患者さんが多く居ました。しかし、現在では多くの患者さんが治療を続けながら、仕事や家庭生活を維持し、趣味を楽しんでいらっしゃいます。

日常生活では、ストレス管理・紫外線対策・十分な休養が大切です。また、感染症のリスクを減らすため、ワクチン接種や適度な運動も推奨されます。


早めの受診をおすすめします

SLEは初期の段階では「ただの疲れ」や「体調不良」と感じることが多いため、発見が遅れがちです。

次のような症状が続く場合は、一度受診をおすすめします。

  • 関節の痛みや腫れが長引く
  • 微熱が続く
  • 強い倦怠感があり、疲れやすい
  • 皮膚に発疹が出る

早期の診断と治療によって、病気を適切に管理し、より負担の少ない治療を受けることが可能になります。少しでも気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。


まとめ

SLEは自己免疫疾患の一つで、免疫の異常によって全身に炎症が起こる病気です。
関節痛・発熱・倦怠感・皮膚の発疹などの症状がみられます。
血液検査を中心に診断を行い、適切な治療を続けることで日常生活を送ることが可能です。
ステロイドに頼りすぎない治療が進んでおり、新しい薬(生物学的製剤)も登場しています。
早めの受診が大切です。気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。